滋賀報知新聞(ニュース)平成18年1月2日

◆全県◆
戌年/ペットでない使役犬
盲導犬の県内ユーザー
=10年間で約4倍に=

◆大津・大津市◆
〜天才の本格オペラと弦楽四重奏曲〜
=滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール=
〜そして繋がる生命の物語〜
「皇帝ペンギン」
=滋賀会館シネマホール=


◆東近江・東近江市◆
ケーブルネット活用法
=事例研究から今後を探る=


◆東近江・東近江市◆
ガリ版再び産声
蒲生岡本町に
=蒲生岡本町に人が集い文化育む=


◆東近江・竜王町◆
まちおこしの一翼!
ダチョウすくすく成長中
=竜王町岡屋でファミリー誕生=


◆湖西・高島市◆
マキノ町
体で感じるネイチャ−ワールド
エコツーリズムで地域経済を活性化
市民・行政・企業協働で 都会へ売り込み
=赤坂山登山や果樹狩り、星空観察=



戌年----ペットでない使役犬

盲導犬の県内ユーザー

=10年間で約4倍に=

▲近江八幡市のユーザーと一緒に外出するウェンディー。服はファッションでなく、毛が飛び散らないようエチケットとして着ている
◆全県◆

 今年は戌(犬)年、動物の中で人間との関わりが最も深いといわれる犬。昔から飼育方法により狩猟や牧畜などに役立つよう育てられてきたが、近年では介助犬や麻薬検知犬などが新しい分野の作業犬としても活躍している。

 その中で視覚障害者の行動を安全に導く盲導犬は、使役犬(狩以外で人間の為に働くよう改良された犬)の先輩格として広く知られている。

 盲導犬は、適正を判定し、盲導犬としての特別な訓練を受けた犬が、希望する視覚障害者のもとに貸与される。県内では、関西盲導犬協会がその中心的な役割を担っている。

 県内には現在、十一頭の盲導犬が活躍しており、十年前の三頭から四倍近くにも増えている。

 六年前、近江八幡市のユーザーに貸与されたウェンディー(雌・八歳)もそのうちの一頭で、ユーザーが公的な役職をいろいろ務めているので、出かけることが多い。=写真=

 盲導犬が、ユーザーと一心同体に行動出来るようになるまでには、少し時間が必要で、このウェンディーも当初、少し歩くペースが早かったようでユーザーと息が合うようになるのに一年ほどでかかったという。

 最近では、近くの小学校に出掛けて、盲導犬の役割や働きを正しく理解してもらう講演会にもお供している。講演では、盲導犬はペットではないこと、仕事中におやつを与えたり、体に触ったり、声をかけたりしないことなど、注意と理解を児童たちに呼びかけている。

 二○○二年十月に「身体障害者補助犬法」が施行され、盲導犬は、介助犬や聴導犬とともに公共施設や交通機関での使用が法的に認められるようになった。また、マンションにおいても、管理者に居住する障害者が補助犬を使用することを拒まないよう務めることが義務づけられた。

 この法律の改正で、盲導犬や介助犬に対する一般社会の理解が広がった効果もあるが、犬の育成事業を支える財政面の厳しい状況は変わらない。そうした中で希望する障害者に早く質の高い犬が送り届けられるよう関係者の努力が続いている。


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〜天才の本格オペラと弦楽四重奏曲〜

=滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール=

◆大津・大津市◆

 二〇〇六年は、天才作曲家W・A・モーツァルトの生誕二百五十周年となる記念すべき年です。「モーツァルト・イヤー」としての各地でモーツァルトにちなんだ催しが開催されます。

 大津市の県立芸術劇場びわ湖ホールにおいて、その幕開けを飾るのが、四日のプラハ国立劇場オペラ引越公演『ドン・ジョヴァンニ』です。

 このプラハ国立劇場は、一七八七年十月二十九日にモーツァルト自身の指揮で『ドン・ジョヴァンニ』を世界初演した劇場で、作品に対する愛着の深さは世界のどの一流劇場にも優るものがあります。今回の引越公演でも、作品が初演された当時の雰囲気をそのままに味わう楽しさが期待できます。

 多くのオペラファンや出演者などから高く評価されているびわ湖ホールのすばらしい空間で、モーツァルトの傑作オペラを堪能してみませんか。

 一方、室内楽では、レクチャーコンサート『天才モーツァルトの秘密を探る』が二十二日に開催されます。“天国的”ともいわれる美しく安らぎに満ちた音楽を創ったモーツァルトに、「果たして彼は神の子か」という観点から迫ります。何も考えずにただ聴いていると安らぎの音楽であり、楽譜を見ると実は精巧な精密機械のようでもあるモーツァルトの弦楽四重奏曲の神秘…。そして自筆譜に隠されているあっと驚く真実とは…?

 すばらしい演奏とユーモアいっぱいのお話を聞かせてくれるのは、平成十六年度文化庁芸術祭大賞を受賞し、国内外で活躍中の「古典四重奏団」。美しい音楽に酔いながら、新しい楽しみ方を発見できるカルテットのコンサートもお見逃しなく!(びわ湖ホール事業部)

プラハ国立劇場オペラ
モーツァルト作曲
『ドン・ジョヴァンニ』



 ●日時/2006年1月4日(水)18:00開演
 ●会場/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール(大津市打出浜)
http://www.biwako-hall.or.jp/
 ●料金/S席16,000円、A席13、000円、B席11、000円、C席9、000円、D・E席完売



クァルテット・アラカルト
古典四重奏団
『天才モーツァルトの秘密を探る』



古典四重奏団による『天才モーツァルトの秘密を探る』

 ●日時/第1章「神の子である」2006年1月22日(日)14:00開演▽第2章「神の子ではない」2006年3月12日(日)14:00開演
 ●会場/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 小ホール
 ●料金/〔各1回券〕一般3、500円、青少年(25歳未満)1、500円、2公演セット券5、500円(一般のみ)
 ※両公演とも、6歳未満のお子様はご入場できません。 お問合せは、びわ湖ホールチケットセンター(077ー523ー7136)へ。

〜そして繋がる生命の物語〜

「皇帝ペンギン」

=滋賀会館シネマホール=



 新年明けましておめでとうございます。寒い季節ですが、どうせならとことん寒さを劇場で体験してみませんか?字幕版は県内初上映となる「皇帝ペンギン」。南極に生きる皇帝ペンギンたちの暮らしを追ったドキュメンタリー作品です。

 ペンギンと聞いて、当初は「ほのぼの癒し系?」などと思っていたのですが、その想像は思いっ切り甘かったことを劇場で思い知らされました。

 まず驚かされるのは、南極という環境の苛酷さと、皇帝ペンギンたちの生命力の強さ。愛らしい外見とは裏腹に、天敵から逃れ、空腹に耐え、マイナス四十度の極寒と時速二百五十キロにおよぶブリザードの中、子孫を残すための旅を続ける皇帝ペンギン。その忍耐と、水中を美しく「飛ぶ」姿に感動を覚えます。

 そして、大自然の迫力に迫ったこのドキュメンタリーに、甘い恋の語らいをアフレコしてしまうフランス人の想像力にも万歳!ペンギンのカップルが潤む瞳で愛を語り、唇(クチバシやけど)を絡ませ、首筋にやさしくキスをする。恋人たちを描かせたら天下一品、フランス映画の本領発揮です。そして、恋人たちの愛情とともに、文字通り命をかけてその我が子を守る親子の愛にも注目です。

 滋賀会館シネマホールは、新年四日からの上映開始。四、五日の覆面上映を始め、今年も世界の名作を用意し、みなさまをお待ちしています。(シネファンク 深井鉄平)

皇帝ペンギン
 2005年/フランス/86分
 監督・脚本:リュック・ジャケ 
 音楽: エミリー・シモン 
 声の出演:ロマーヌ・ボーランジェ/シャルル・ベルリング/ジュール・シトリュック


 JR大津駅北口より徒歩5分、県庁前の滋賀会館5階のシネマホールで、1月4日から15日まで上映。
 4日から9日までは12:30より、ただし7日から9日までの3日間は16:40の回が追加されます。(10日は休館日)11日から15日までは14:45と18:55の2回上映。

 当日一般:1300円、学生:1000円(毎週水曜日は1000円均一、毎週木・金曜日朝の初回と16:00以降の上映は1200円均一)お問合せは077ー522ー6232へ


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ケーブルネット活用法

=事例研究から今後を探る=

◆東近江・東近江市◆

 合併で生じた地域格差の解消に取り組む東近江市は、新市まちづくり計画の柱に「ケーブルネットワーク事業」を打ち出た。基盤となる「情報の道」(光ファイバー)を整備する一方で、付加価値を生かした「ケーブルテレビ」(CATV)へは、当面の加入率を五〇%に設定し、住民説明会を開くなどして加入促進に力を入れる。総事業費五十二億円(合併特例債活用)を見込み、今年十月ごろの開局を目指す。多チャンネルのテレビ、加入間無料のIP電話、インターネットに目が奪われがちだが、賛否両論が渦巻く中で、ケーブルネット本来の活用法を独自入手の先進事例などを基に紹介してみたい。

◇情報の道◇


 在宅健康支援 市民の生活習慣病などの対策(食事・運動など)を映像番組で指導する。(保健指導も可能)

 在宅介護支援 メンタルケア(話し相手)も含めた遠隔リハビリなどを提供する。ホームヘルパーの巡回時にも適切なサービスの提供を行う。

 デジタル・ミュージアム 管内には有形無形の歴史遺産が多くあり、これらのコンテンツ(動画、写真)をインターネット上に公開し、小・中学生の学習教材として活用し、市内外の人に東近江市の文化を紹介する。

 施設遠隔監視 上下水道や簡易水道の配水池、下水処理施設の集中監視を行い、施設の障害や機器の故障管理など緊急事態に対処する。

 産業振興 商店街の買い物情報、イベント情報を提供する。テレビの生中継と連動して商店街情報を消費者にリアルに提供し、消費者の生活支援とともに地域経済の活性化につなげる。

 カメラ監視システム 交通渋滞や降雪、降雨情報などをCATVに加入のテレビ、インターネットに接続のパソコンや携帯電話などに提供する。

 生涯学習支援 テレビやインターネットを利用して生涯学習への講座、講習会などが家庭で受講できる。

 大学の公開講座 市内の大学とタイアップし、市民への公開講座や中・高生を対象にした大学授業の受講を可能にする。

 安否確認 家庭の日常利用する器具や機器にセンサーを取り付け、高齢者の一人暮らし世帯の安否確認を行い、安心安全の暮らしをサポートする。

◇ケーブルテレビ◇


 BS・CS放映 BSやCS放送をCATVケーブルから各家庭内のBS・CSチューナーに送信する。

 ビデオ・オン・デマンド 各家庭から電話などでセンターにアクセスし自主放送番組などが好きな時に見られる。

 屋外拡声放送 市役所などからの告知放送や緊急放送などの情報を屋外のトランペットスピーカから放送する。

 宣伝・広告 CATVコミュニティチャンネルや他の自主放送番組、TVガイドなどを利用して、企業や商店の広告を掲載し消費拡大を図る。

 防災情報提供 地域に危険が迫ったと時、危険な人物が徘徊している、洪水の恐れがあるなどの情報を提供する。

 気象・水位観測 市の中央には愛知川が流れ、氾濫すると危険な河川なども多くあり、防災上の観点から市内数個所で気象・水位観測を行い、CATVで情報を提供する。

 観光情報提供 観光案内情報、特産物情報をケーブル局で制作した映像番組をコミュニティチャンネルで放送するだけでなく、NHKや民放、衛星放送などを通じて全国配信し地域の情報を発信する。さらにインターネットを利用し地区内外に発信する。

 災害関連放送 市民の身体生命にかかわる事件・事故について、告知や対応策をコミュニティチャンネルなどで緊急放送を行う。また、土砂災害や河川水位、気象の警報情報なども文字スーパーや告知端末から放送する。


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ガリ版再び産声

=蒲生岡本町に人が集い文化育む=

▲ガリ版伝承館周辺をモチーフにした作品を紹介する「第1回ガリ版芸術村文化祭」(東近江市蒲生岡本町の岡本公民館で)
◆東近江・東近江市◆

 「電話をかけるよりも、手紙を出して相手からの返事を待つように、考える時間や作る時間を楽しむのが謄写版」と、第一級の謄写技術継承者として活躍する若手作家・佐藤勝英さん(40、熊本県在住)は愛称・ガリ版の魅力を語る。物がなくても幸せだった時代を思い起こさせるガリ版。発祥の地である蒲生岡本町で再びスポットライトを浴び、早さ・効率ばかりを追い求め人々が置き去りにしてきた大切なものを、ふと気付かせる空間づくりに、行政と住民組織が一体となって取り組み始めた。

 蒲生岡本町は、エジソンのミメオグラフをヒントに発明された謄写版生みの親・堀井新治郎親子のふるさと。ヤスリの上に原紙をのせ、鉄筆でガリガリと音を立てながら文字や絵を書き、手を汚しながらローラーでの印刷に夢中になった思い出は、技術が進歩し時代が変わろうとも色あせることはない。

 謄写版の器材を集めてユーザーへ提供する活動を十一年前から続けているガリ版ネットワーク主宰の志村章子さんは、「謄写版は、庶民に普及したメディアでもある。これだけのロングセラー商品は他にはない」と、日本の近代化において謄写版が果たした役割の大きさを強調する。

▲謄写技術継承者として活躍している佐藤勝英さんの多色刷りの実演で鉄筆の動きに目を凝らす来場者ら
 しかし、スピードがカギを握る情報化社会の中で、コピー機の発達もあり、急速に謄写版の影が薄くなっている。このままではガリ版発祥の地という地域特有の文化・遺産が失われてしまう、何とか後世に伝えていくことはできないかと、旧蒲生町と同教育委員会が立ち上がった。

 初の試み「佐藤勝英展」(昨年十一月二十三〜二十七日開催)は、ガリ版伝承館に隣接する堀井本家母屋の修復完了により展示・体験室の拡張が図れたことも記念して企画されたもの。

 謄写技術の天才・草間京平に師事した赤羽藤一郎氏の弟子・佐藤さんの作品展示と実演を行った。二十四歳のときに孔版の世界へと飛び込み、現在は草間らが旗揚げした黒船社(黒船工房)の名を継承している佐藤さんは、「(ガリ版は)人間のスピードに合っていて、まめに手を加えないといけないところなどは人間に近いものを感じる。やり直しがきかず一枚の版にかけ、刷ってみないと結果がわからないドキドキ感がたまらない」という。

 一人でも多くの人の好奇心をかき立て、やってみたいという気持ちを広げようと、佐藤さんはガリ版伝承館で多色刷りを実演した。一ミリ四方に四本の線を書き入れる確かな技術と色をかけ合わせ新たな色を生み出す想像力・センス、何よりも謄写版を愛する心が一体となった独特の雰囲気に、県内外から訪れた老若男女約百五十人が引き込まれた。

▲佐藤さんの作品をカメラが搭載されている携帯電話で撮影する子どもたち
 ガリ版文化の復興さらには芸術拠点整備に向け、行政だけでなく住民も動き出した。地元の岡本地区は、非営利団体「ガリ版芸術村」を昨年創設し、佐藤展と同時に“第一回ガリ版芸術村文化祭”を岡本公民館で繰り広げた。

 ガリ版伝承館周辺をモチーフにした芸術家の作品を紹介し、人的資産も含めて地域の歴史風土を見つめ直す機会を設けるなど、長年温めてきた“ガリ版芸術村”構想の具現化に踏み切った。

 「一つの刷り台をみんなで囲み使ってこそ意味がある」という佐藤さんの言葉に、すべてが凝縮されている。全国に一つしかないガリ版発祥の地・蒲生岡本町も同じで、ガリ版を中心に人が集うことでコミュニケーションが生まれ、新たな文化・歴史が刻まれていく。

 明治二十七年から百十二年のときを経て、謄写版が再び産声をあげようとしている。

「ガリ版芸術村構想」

■ガリ版芸術村事務局・岡田文伸

 平成二年に堀井本家から蒲生町に寄贈された敷地に建ってある堀井家母屋屋敷群、二棟の蔵、客間として利用された洋館。このうち洋館は「ガリ版伝承館」として平成十年に生まれかわったが、残りの建物は管理されないまま、十四年の年月を過ごしたため、老朽化が激しく無惨で非常に危険な状態になってしまい、また、周辺の敷地も草が繁茂し、ゴミ捨て場同然の荒れ地と化していた。

 平成十四年秋、夢プラン事業の発足と同時に「ガリ版発祥の岡本」のPRというより、荒廃の一途の堀井家周辺をなんとか整備してほしいという要望により、所有者である東京の堀井本家や三家の堀井分家にも何度も足を運び、交渉を重ねてきた。そして、苦労の甲斐あり、ようやく昨秋、行政協力のもと、建物の整備と堀井家および周辺すべての土地の公有化、加えて公園化を完了した。

 これを契機に、今後、「ガリ版芸術村」としてさまざまな整備を手掛けていきたいと思っている。まず、周辺の蔵を整理し、ガリ版にかかわってこられた方々と交流を図り、資料・器材・消耗品を収集し、これからガリ版を始めたいという方への支援。さらに、ガリ版だけでなく孔版美術の紹介や実演、そしてガリ版芸術村に来ていただいた方が、体験やおしゃべりしながら一日ゆっくり過ごしていただける空間にしていきたいと思っている。


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まちおこしの一翼!

ダチョウすくすく成長中

=竜王町岡屋でファミリー誕生=

▲ダチョウ飼育に奮闘中の樋田さん(右)と島村さん(竜王町岡屋のダチョウ牧場で)
◆東近江・竜王町◆

 「竜王町には何もない。まちおこしにつながるものはないか」と、気心知れた竜王町岡屋の樋田源治郎さん(66)と島村清司さん(64)が思案していた。そんなとき、他町でダチョウの飼育が行われていることを知り、ピーンときた二人は、第二の人生での楽しみの一つとして、友人らの協力を得て「竜王ダチョウファミリー」を誕生させた。

 「ダチョウ飼うし、オーナーになってくれ」との通称ゲンちゃん(樋田さん)とキーさん(島村さん)の誘いに、友人らも「おもろいやんか」と賛同。ダチョウの飼育・販売を通して、安心でおいしい食文化を創造し地域の活性化につなげることを目的に、ダチョウの飼育方法を学ぶところから活動が始まった。

 樋田さんと島村さんは、昨年二月、余呉町で脱サラしてダチョウを飼育している男性のもとを訪ね、ダチョウに関するノウハウを習得。その一カ月後、ちょうど樋田さん所有の竜王町岡屋にある畑と林(百五十坪以上)が、民家から少し離れた里山にあったため一カ月かけ更地にし、手作り牧場を完成させた。

 小屋の木材や鉄骨、フェンスといった材料は、すべて知り合いから無料で譲り受けたもの。五月には膝下ほどの背丈のひな十一羽(生後一カ月)が新居での生活をスタートさせ、八月に新しく四羽も加わった。

 どんな環境にも順応できるダチョウは、静かでおとなしく、他の鳥類と比べて腸が長いためエサをゆっくり完全に消化し、ふん尿のにおいもほとんど無く、手がかからない。

 二人の日課は朝夕のエサやりで、「気になってしょうがない」とわが子を見るように目を細める。ダチョウたちは一年もすると、体重が八十〜百キロになり、飼育効率は牛肉よりも優れている。

 ダチョウの生肉はくせが無く、鯨や鹿肉のような歯ごたえで、生姜醤油で食べると美味とのこと。あっさりしていてヘルシーとくれば女性の注目も集まる。特大の卵は、一個が鶏卵三十個分に相当し、調理するとふんわりしておいしい。外側に大津絵を描いた卵の殻は、竜王町鏡にある道の駅竜王かがみの里で販売中だ。

 竜王ダチョウファミリーは、オーナー制を導入し、オーナーからの徴収金をひなと飼料代に当て、生肉を販売し得た収入を配当としてオーナーへ分配する仕組みだ。現在、竜王町を中心に近江八幡市や野洲市、旧蒲生町など計三十一人がオーナー登録しており、二カ月に一度、定例会で現状報告を受けつつ交流を深めている。

 今年一、二月頃には、同ファミリー初の生肉販売に挑戦する予定で、うまくいけばオーナーへの配当が二月以降に手渡される見込み。「この子らを一人前にして販売し、採算ベースにのせられれば、実績もでき十分普及していけると思う。焼き鳥や居酒屋などでまずダチョウを試食し良さを知ってもらい、販路拡大にもつなげていきたい」と、二人は夢を膨らませる。

 また、ダチョウ牧場は、山口県や愛知県など他府県からの見学者のほか、園児や家族連れで賑わい、二人は「たくさんの人に見に来てもらえるのも楽しみ」だという。

 第二の人生をダチョウとともに歩み出した樋田さんと島村さんは、「竜王のまちおこしにつながり、ダチョウ牧場が名所の一つとなって、町内から近隣市町へとファミリーの輪が広がっていけば」と、ふるさとに新風を吹き込む。

 


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マキノ町

体で感じるネイチャ−ワールド

エコツーリズムで地域経済を活性化
市民・行政・企業協働で 都会へ売り込み

=赤坂山登山や果樹狩り、星空観察=

▲赤坂山で参加者に自然案内するマキノ自然観察倶楽部の谷口さん(右端)
◆湖西・高島市◆

 澄みわたる高原の空気、浜辺に打ち寄せるさざ波。「里」「山」「湖」の豊かな自然に恵まれた高島市マキノ町で、市民・行政・企業が一体となって、エコツーリズムをまちの産業として興そうとする取り組みが進められている。緑豊かな農山村を訪れ、人情や食文化、自然に触れ、のんびり自分を見つめ直す体験型観光。その魅力を知るため昨秋、現地で開催された一泊二日の「マキノ里湖もりもりツアー」を取材した。

 新・花の百名山「赤坂山」は、紅く染まった落ち葉に覆われ、すっかり晩秋の装いだった。京阪神を中心とする参加者三十一人を案内するのは、谷口良一さん(マキノ自然観察倶楽部事務局長)をはじめとする「マキノ体験型観光産業振興計画活用調査委員会」のメンバーだ。

 一昨年結成された委員会は、市民団体や観光業者、企業、行政など多彩な顔ぶれで、モットーは「おもてなしの心」。地元の自然、食文化を観光客に伝えたくて、湖の食材を使った料理、山の自然観察など企画を練り、京阪神での宣伝に力を入れてきた。

 谷口さんは「マキノ町の地形は、比較的短時間で湖、山、里を移動できるので、変化のあるエコツアーが楽しめる。都会の人に自然に触れてもらい、その大切さを知ってもらうのと同時に、民宿などに泊まってもらえば地域経済も潤う」と期待する。

 この日のツアーは、赤坂山のブナ林の観察、山菜狩りがメイン。やや急な登山道をしばらく歩くと、またたくまに静寂の世界に。参加者は新鮮な空気をたっぷり吸い込み、時々立ち止まっては植物のガイドを受ける。

 標高六百メートル辺りから美しいブナ林が現れた。ブナは保水力が高く、林下にはナメコなどのキノコを育てる。

 差し出された聴診器を、ブナにそろりと当てて耳を澄ますと、地の底から何かが沸き上がってくる音が聞こえた。地下に張り巡らせた根から、大量の水を吸い上げる音だった。人で例えれば鼓動の音だ。

 案内してくれた実行委員会のメンバーは「自然は理解するものでなく、体で感じるものなんです」とにっこり。参加者は不思議そうに何度も聴診器をあてて、その生命の営みをしっかり聞き取ろうとしていた。

 体験モニターに実施したアンケートでは「また参加したい」との回答が多かったという。実行委員会はこれを参考にして、新たなツアーを企画していきたいとしている。市民、行政、企業が一体となった取り組みはまだ手探り状態だが、確かな一歩を踏み出したようだ。

 


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