限界耐力計算

まだまだ説明不足のところはありますが、順次加えていきます。

伝統工法と現代工法のちがいは、次の通り。

現代工法は、水平力(地震力)を筋かいなどで抵抗する、力には力でという工法。(右)   剛構造
伝統工法は、揺れて吸収する。(左)   柔構造 
      
現代工法は、揺れが小さいのが特徴で、筋かい周辺に水平力が集中して筋かい周辺が壊れやすい。
変形角が小さいのが特徴ですが、1/60より大きくなれば、筋かいは破断する。

伝統工法は、揺れは大きいが水平力が集中することはない。揺れは大きいが、稀に起こる地震で1/120とそれ度大きくはない。極稀に起こる地震では1/15と大きいが、ここまで揺れても倒れない。

両方とも、建築基準法違反ではありません。
伝統工法の良さを引き出せる構造計算の方法が、限界耐力計算である。

                          
限界耐力計算とは 2質点系
建物各階の地震時の復元力特性(水平力と変形量の関係)を作成し、建物を一質点系に置き換えた上で、加速度応答スペクトルを用いて、地震時の応答値を予測する。応答値が、損傷限界値・安全限界値以内に収まっているかを確認する。

注意点として、限界耐力計算をする設計者と構造体を墨付け・きざむ大工の連携していなければ、危険な構造物ができることになります。また、地震力が集中するような、筋かい等の変形量の少ないものは使わないのことも重要です。
粘りのある建物に適した計算方法です。例えば、土壁や、貫、差し鴨居等。
筋かい等で支える建物には、不向きです。(筋かい等のデータは存在します。)

言葉の説明
・加速度応答スペクトル
地震動等の外力を受けた建物に生じる加速度(応答加速度)の最大値を、建物の固有周期を横軸にしてスペクトル表示したもの。また、応答加速度は減衰定数にも依存し、一般に減衰定数が大きくなるほど、応答加速度は小さくなる。
・損傷限界値
構造体に損傷が発生しない範囲で設計者が設定する値。限界耐力計算では、稀に発生する地震に対して構造部材の応力又は、建物の応答変位がこの値以下であることを検証する。
・安全限界値
構造体が倒壊・損壊しない範囲で設計者が設定する値。限界耐力計算では、極めて稀に発生する地震に対して構造部材の応力又は、建物の応答変位がこの値以下であることを検証する。
1質点系


架構の復元力特性を設定するに当たっては、主として各種の耐震要素を有する単位フレームの大変形領域含んだ振動実験の結果をもとに荷重-変形関係を設定し、これを建物の架構に応じて加算することにより算出する。単位フレームとは、幅1820mm、高さ2730mmを有する架構を指す。
振動実験の様子