平成19年1月5日(金)第14611号

◆湖南・栗東市◆
お母さんの「自己実現」応援
NPO法人びぃめ〜る企画室
消費者・生活者の視点でタウン紙
=コミュニティカフェ、開業講座を運営=

◆東近江・東近江市◆
―子供の健康を地域で守れ―
ズームイン 「食育」
=学校給食は地産地消の決め手=


◆東近江・東近江市◆
何かしたいが きっかけが…
=退職後の生きがい支援=


◆東近江・東近江市◆
桑でふるさと興し
成人病予防
=健康食品ミドリン=

◆東近江・東近江市◆
識字率向上に一役
海を渡ったガリ版
=文・写真 蒲生岡本町 岡田文伸=


◆東近江・日野町◆
ネット販売足掛かりに!
夢の実現へ大きな一歩
=日野町の栢木ゆうこさん=


お母さんの「自己実現」応援

NPO法人びぃめ〜る企画室
消費者・生活者の視点でタウン紙
=コミュニティカフェ、開業講座を運営=




▲理事長の小川泰江さん(コミュニティカフェBe-Cafeで)
◆湖南・栗東市◆

 自分らしく生きたい----。そんな子育て真っ最中の女性の思いを応援するNPO法人がある。びぃめ〜る企画室(事務局・栗東市綣)は、タウン紙を発行するほか、託児付き講座や起業セミナーの開催、子どもの遊び場もあるコミュニティカフェの運営、その取り組みは女性パワーで進化を続けている。

 活動のモットーは、隔月発行のフリーペーパー「びぃめ〜る」を開けばよく分かる。県内のスローライフをテーマにした衣食住の店や、母親向けの育児サークルの紹介など、紙面はコマーシャリズムに流されず常に「消費者・生活者の視点」であふれている。

 十一年前に都市部から滋賀県に転居してきた理事長の小川泰江さん(43歳)は、それまで生活情報を知るのに必需品だったタウン誌が、滋賀県にないのに驚いた。「それじゃ、自分でやってみよう」と思いきって発刊へ。

 趣旨に賛同する仲間六人とともに、編集のほか、広告掲載の営業もこなし、なんとか第一号が誕生。現在、メンバーは県内各地の女性七十人に増え、育児・家事・仕事の合間を縫って、協力できる範囲で関わっている。配布施設も当初の湖南地域の一部から、県内全域五百カ所に広がった。

▲身近な生活情報がつまっているフリーペーパー「びぃめ〜る」
 「女性が自分らしく生きるため、一歩踏み出すきっかけに」という創刊時からの思いは、フリーペーパー発行だけでなく、託児つきの自己実現セミナーの開催にもつながった。

 「母親が子育てを一段落してからいざ社会へ出ようとしても、希望の仕事につくことが難しいのが現状。それでは能力があっても、もったいない」。

 そんな思いで催されたセミナーからは、受講生が参加をきっかけに実際にショップをオープンするなど、二件の事業が飛び出した。

 また、企画室がJR栗東駅前の商業ビル「ウィングプラザ」で運営するコミュニティ・カフェ「Be-Cafe」では、元パティシエや将来開業を目指す女性が、パンやケーキを交代で納品し、能力を発揮している。

 小川さんは「子育て中の母親は社会的にマイノリティーなので、彼女達の声は世の中の仕組みに反映されていない。女性の自己実現に向けて、社会の制約をカバーして克服していきたい」と意欲的だ。

 びぃめ〜る企画室への問い合わせは、電話077-554-1774へ。


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―子供の健康を地域で守れ―

ズームイン 「食育」

=学校給食は地産地消の決め手=



▲太田 初代さんの講演「いただきます!から子育て革命」
◆東近江・東近江市◆

 子供の食を取り巻く危機的な状況から国は、食育基本法(十七年七月施行)に基ずき食育推進計画を昨年三月に策定した。教育の柱(知育・徳育・体育)に食育を加え、社会が一体となって国民運動を展開し、子供の健康を地域で守り育てる基本政策を打ち出した。東近江市でも家庭、学校、地域が連携しながら取り組む食育推進計画を二十二年度までに策定する方針を固める一方、地産地消推進計画を今年度中に策定する。食育と地産地消のかかわりを生産者、販売者、消費者の代表が意見交換した「食と農フォーラム」から探ってみた。

 子供や保護者に食指導を行う「ぴーまん食楽部」の大田初代代表(管理栄養士)の講演「いただきます!から子育て革命」は、次世代を支える子供の食事に危機感を持ち、いかに食育が重要なのかを問い掛けた。

 「ご飯は、よくかむことで頭の働きを助け、ストレス解消、心の安定に役立つ。特に、朝ご飯を食べることによって、寝ている脳を刺激し、肥満防止や快便効果が生まれる。食事は、家族揃ってワイワイガヤガヤ楽しく食べるのがポイント」と。

 その上で、食卓は「人への気配りを育てる」と指摘する。食べたいけれども弟、妹に残しておこうという、自分を抑制する気持ちが自然と生まれる。人とのコミュニケーションがとれない子供が増える中、家族で囲む食卓は「思いやりをつくる場」であることを強調した。

 続くパネルディスカッション「私にとっての地産地消」で、稲本志良・竜谷大教授をコーディネーターに、池田喜久子(池田牧場専務)、藤関明雄(あいとうマーガレットステーション館長)、野田康司(びわ湖ベジタブルロード理事長)、井田明美(コープしが八日市委員会代表)の四氏が意見を交わした。

 【池田専務】食の安心・安全を完全に求めるのは無理。地産地消の良さは、食材がどこから来たのかを説明できることだろう。人間と同様に動物も植物も水が無ければ生きていけない。きれいな水を下流に送ることが上流の仕事。汚れた水から新鮮野菜は取れない。

 【藤関館長】地元で取れた農産物を他の地域の人にも買ってもらうことが地域活性化につながる。地域の良さをPRすることで訪れる客も増え、リピーターが生まれる。農家と消費者の交流の場としてだけでなく、やはり商品の安さも販売戦略に欠かせないだろう。

 【野田理事長】地産地消は学校給食から。あのオッチャンが作ったと話題にしながら食べてほしい。地元産だとコスト面で高くつくことは承知してる。ゴミ処理費用の多くは生ゴミで、これを肥料化すれば、給食費に還元できる。生ゴミを地産地消に生かさなければ。

 【井田代表】東近江は恵まれている。直売で新鮮な野菜が手に入るから。消費者が選ぶ基準を高く持てば、レベルの高い生産者が育つ。すべて有機農産物が安全とは言い切れず、何を目安に選ぶかだが、やはり新鮮で、
安全で、安くて、おいしいのが一番ではないか。

 【稲本教授】安心・安全の文字を簡単に使い過ぎ。フォーラムなどを通して生産者と消費者が意見交換をすることによって、両者間の隔たりがちじまり、食への意識が高まるだけでなく、おのずと地産地消につながる。


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何かしたいが きっかけが…

=退職後の生きがい支援=



▲障がい者、高齢者の外出を応援している脇さんと仲間たちのパソコンボランティア「能登川 和ねっと!」
◆東近江・東近江市◆

 日本経済の発展を支え、ようやく子育てに落ち着きを取り戻した「団塊の世代」と呼ばれる人々にとって、人生の第2ステージをどのように過ごしていくかは大きな課題。そんな世代が一斉に定年退職する「2007年問題」を本格的に迎え、各地で退職後の生きがい支援の取り組みが広がっている。その背景にあるのが、元“企業戦士”たちの孤独。地域に溶け込めず、引きこもりから介護保険の対象になってしまう男性が多い。そんな彼らの「地域デビュー」を支援しようと、取り組みが始まった。

 高度成長期やバブル崩壊を実体験してきた団塊の世代(昭和二十二〜二十四年)たち。特に、モーレツ社員、企業戦士と呼ばれたサラリーマンたちは、わが家と会社の往復で地域との関わりが薄い。そんな彼らが突き当たるのが「退職後の暮らし」だ。仕事人間であるほど自分の時間が見つけられず、通勤ラッシュの苦しさより「やること(仕事)と行き場(職場)」がないのが辛いという。そのため、地域にとけ込めず“引きこもり”になってしまう人も多い。

 そんな孤独感から、退職後に体をこわしてしまった脇眞澄さん(能登川地区在住)は、大きな手術を機に「地域に役立つことがしたい」という思いが募り、半年にもわたるボランティア講座を受講。ここで体験した外出の楽しさを伝えようと、平成十四年二月、修了仲間と一緒にパソコンボランティア「能登川 和ねっと!」を立ち上げ、地域の福祉センターでパソコン講座を開講。障がい者と高齢者の外出を応援している。

60歳からの地域デビュー

「仲間づくり」がキーワード

 ここで使うテキストは人気で、実際に出掛けたくなるような旅行の案内文など、現地の名物・見所を調べるうちに「外」へ意識が向かい、引きこもりが治った―という受講者もいる。

 こうした喜びの声に生き甲斐を見つけた脇さん。近年では、外出が難しい在宅障がい者への訪問指導も行っている。

 また同地区では、男性ばかりでつくる「OYAJIクラブ」も人気で、団塊世代を中心に健康づくりや体験講座などを楽しんでいる。

 いずれも、最大のキーワードは『仲間づくり』。職場を去った後、重視されるのは人柄であり、肩書き抜きで楽しめる仲間がいることは第二の人生の力になる。続いては『知識・経験を生かせる機会』だろう。

 しかし、地域に出たいと意欲する人を、目的の場所まで引き出すシステムや、その間をつなぐ人材(地域コーディネーター)がなく、「具体的にどうすればいいのか分からない」人がほとんど。

 このシステムをつくるため、県社協は先進地・近江八幡市で「高齢エンジョイ地域活動モデル事業」を始めた。これは、高齢者自らが地域コーディネーターとなって退職サラリーマンの相談にのり、希望や興味に応じた団体を紹介する取り組みで、現在、十八人が活躍している。

 こうした取り組みを広めるには、自治体や教育・福祉機関、自治会、企業などの連携が不可欠。それにはまず、定年後の暮らしや生きがいを自らが考えると同時に、彼らの「地域デビュー」を支援する体制整備が重要と、東近江市がいち早く発起し、「出発シンポジウム2007」を企画した。

 主催の市長寿福祉課では「日本の高度成長を支えた心意気のある世代。その素晴らしい知恵や力を地域に生かせるシステムをつくりたい。まずは、仲間づくりを始めませんか」と呼び掛けている。

 シンポジウムは、一月二十日午後一時半から湖東信用金庫本店で開かれる。講師は、東近江地域振興局地域健康福祉副部長の北川憲司さん、テーマは「退職を間近に控えたボクからのメッセージ―定年退職者の地域デビュー」。同二時二十分からは、まちづくりリーダーとして活躍する三氏のシンポジウムが行われる。

 無料。十二日までに長寿福祉課(0748―24―5642、FAX24―1052)へ。


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桑でふるさと興し

成人病予防

=健康食品ミドリン=



◆東近江・東近江市◆

 古くから健康維持やせき止め効果があると言われる桑の葉。最近の研究により、デオキシノジリマイシン(DNJ)という特有の成分が見つかり、糖尿病の予防や血糖値の抑制、ダイエットに効果があることが分かった。そんな桑を栽培してまち興しを図ろうと、東近江市永源寺高野町の農業生産法人「永源寺マルベリー」が、桑葉を粉末・錠剤にした健康食品「永源寺ミドリン」を完成させた。

 永源寺地区には、養蚕業の衰退によって放置されたままの桑畑が数多くあり、この遊休農地の利用が大きな課題になっている。そのような中、京都工芸繊維大学の研究によって、桑の葉に含まれるDNJが生活習慣病などに効果があることが分かり、平成十五年、旧永源寺町時代に町長の諮問機関として設置された「NPO法人町づくり審議委員会」が、ふるさと興しとして近代養蚕を提案。翌年四月、生産から商品化までのプロジェクトが始まり、地域の高齢者ら六人が出資し合って農業生産法人(有)永源寺マルベリー(吉澤克美代表取締役)が誕生した。

 マルベリーでは、同大学研究チームと京都府立大学、府立医科大学、信州大学、関西医大病理研究室、京都市ベンチャービジネスクラブらとタイアップし、桑の研究・生産・ビジネス展開を行っており、地域住民の協力を得ながら、この二年間に二ヘクタール、約一万五千本の桑を植裁。二年をかけ、ついに「永源寺ミドリン」を完成させた。

 ミドリンは、農薬、化学肥料を使わずに育てた桑の葉を粉末にし、加工したもので、ブランド葉のハヤテサカリを使用している。

 DNJの効果について、共同研究する(株)シルク工芸の野村忠敬顧問薬学博士は「DNJは、体内に取り込んだ糖の分解を阻止する働きがあり、食後の過血糖を抑制します。また、血中の脂質増加も抑え、脂肪肝の改善や機能改善、糖尿病、ガン予防に役立ちます」と紹介し、成人病予防の健康食品として推奨した。

 さらに、カルシウム(牛乳の二十七倍)や鉄(小松菜の十五倍)、亜鉛(ホタテの六・五倍)などのミネラルや食物繊維、ビタミン、フラボノイドを豊富に含み、健康増進や低インシュリンダイエットも望めるという。

 現在、「ミドリン」は永源寺高野町の事務所販売のみだが、永源寺を代表する政所茶、永源寺こんにゃくと並ぶ特産品にしたい―と意気込み、全国販売を視野に販売ルートを開拓中。
▲人気上昇中、ベーカリーショップ「クルトン」に並ぶ桑の葉食パン

焼きたてパンも人気
和菓子メーカーとも試作中

 また、桑の実を使ったジャムや、アイスクリームなどのアイデアも満載で、いま、八日市駅前のショッピングプラザ・アピア一階にあるベーカリーショップ「クルトン」では、この桑の葉を練り込んだ焼きたて食パンを置いている。

 さらに、京都の和菓子メーカーと提携し、桑葉を使ったお菓子を試作研究中だ。

 将来的には産学官との共同ベンチャーにより、養蚕事業にも取り組み、桑の実の摘み取り体験や観光園の開設、シルク化粧品、医薬品製造を計画。賑わいのあるまちづくりへ、コミュニティビジネスの創出を目指している。

 価格は、百八十粒入り(約一カ月分)四千円、粉末は百五十グラム入り(同)四千円。問い合わせは、有限会社永源寺マルベリー(0748―27―0772)へ。


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識字率向上に一役

海を渡ったガリ版

=文・写真 蒲生岡本町 岡田文伸=

▲初めて鉄筆を握る先生の筆圧は完璧!!
 ●関空から10時間


 「五十年前の日本が見られる」。そんな光景に出会えることを期待して、私は昨年十月二十四日、関西空港発バンコク経由で、赤レンガのターミナルが見えるネパールの首都カトマンズのトリブバン国際空港に降り立った。ネパール滞在五泊六日のスリリングなドラマの幕開け。

 電気のない山村部で、子どもたちの大半が学ぶ小学校にガリ版を贈る目的でやってきたが、果たして使ってもらえるのか。ネパールから京都大学へ留学に来ているサキャ・ラタさんからは「文字に頼らず、言葉で伝えた方が早くて便利なので、どうでしょうかねぇ」と不安な返答。

▲「ナマステ」と手を合わせ出迎えてくれた全校児童195人の大きな瞳
 ●ブッダ基金と京都中RC

この事業は、約三年前、京都大学へ留学に来ていたホム・バハドゥール・リジャル氏と京都中ロータリークラブ(以下京都中RCと呼ぶ)の出会いからはじまり、京都中RCがリジャル氏の要請により彼の故郷サッレ村をモデル的に支援することを決めたという。さらにサッレ村では、NPO法人ブッダ基金も生活調査と教育支援を行っていることから、今回は合同で参加した。
 京都中RCはこれまで村に道路がないことから、全長四キロの新設道路を計画し、現在三分の一まで工事を進めた。道路名は“京都ロード”。また、識字率の向上に重点を置き、今回、ガリ版の普及に着目していただいたわけである。

本当の幸せとは何かを

考えさせられたネパール5泊6日

 ●ピーパル小学校へ

 京都中RC海外支援団一行(七人)は、カトマンズで市内観光後、NPO法人ブッダ基金と合流。一夜明け、四輪駆動車四台に分乗してダーディン郡サッレ村バル・ピーパル小学校(バル・ピーパルとはガジュマルと菩提樹という意味)を目指して出発した。
 混雑と土埃と車のクラクションの大騒音のカトマンズ市内を通り抜け、国道をラリーのごとく走行する運転手の勢いを抑えながら四時間揺られ、さらに一時間オフロードラリーのような凸凹砂利道の山岳地帯を抜け、やっと京都ロードに着いた。
 その起点で村人たちの熱烈な歓迎を受け、道路の進捗状況を視察。村人百人が総出で農閑期に二年間かけて造成してきたという。ひたすら牛と人力だけで造成された道を眺め、村人の団結力とエネルギーに感動を覚えた。

▲すし詰め状態の中で開いた先生対象の「ガリ版教室」(ネパールダーディン郡サッレ村にあるバル・ピーパル小学校で)
 さらに歩くと、バル・ピーパル小学校の進入路両脇に全校児童百九十五人が、大きな瞳を輝かせながら並んでいた。拍手喝采の中、京都中RCの団長・鈴木基一さんはにじむ涙をこらえて、握手握手そして「ナマステ、ナマステ」(あいさつやありがとうなどあらゆる場面で使用するチベット語。人との出会いや自然の恵みすべてに感謝する気持ちが込められているように感じた)の連続。我々に対する期待

紙教室、七人の先生には職員室でガリ版教室を開いた。小学校といっても土屋が三棟、職員室は手作りのイスと机が二セットしかなくすし詰め状態。でも、農作業で学校へ通えない友だちと比べれば楽しい学校生

 東近江市蒲生岡本町からはるばる持ってきたガリ版器材と消耗品。先生方の不思議そうな視線を感じながら、段ボール箱から取り出して机に並べた。ガリ版伝承館手製の謄写版・ヤスリ版・鉄筆・ロウ原紙・黒インク・ローラー・インク練り板・修正液、そして日本を旅立つまでに作ったネパール語の解説書を先生に配り、それぞれの名称と使い方を説明。

 まずは試しにガリ切り。ロウ原紙をヤスリ版に張り付けて、鉄筆を握って「My name is OKADA」。続いて、鉄筆による先生方の自己紹介。みなさんの筆圧は完璧で、インク練り板にインクを出していざ印刷へ。とてもきれいに仕上がった。

 でも、先生方の感激が感じられない。国民性なのか、緊張なのかわからない。それとも必要性を感じていないのか。京都大学のラタさんの言葉が脳裏をかすめた。

 ●50年前の風景


 次の日にも学校を訪問することを約束し、宿泊地であるリジャル氏のお宅に向かった。リジャル氏の自宅玄関に入ると、牛と山羊が小屋につながれていた。そばには家畜糞が堆肥となって高く積まれ、鶏が堆肥を掻き回しながら餌をあさっている。まさに、日本の五十年前の風景である。

 一番星が光り輝き始めると、どこからともなく集まってきた大人と子ども五十人ほどが、楽器の演奏に合わせて踊り始めた。我々の歓迎パーティーである。我々の下手な踊りを見て、村の老若男女が大笑い。

 夜も更けてあたりがかなり冷たくなった頃、空を眺めると満天の星空に無数の星が降り注いでいる。淡い光の帯「天の川」が悠然と流れ、一分おきに流れ星が確認できて願い事がたくさんできた。「どうかすべての行程が順調で、全員、日本に無事帰れますように」。

 ●やった!!


 明け方五時前、けたたましい鶏唱。私は、家で鶏や牛を飼っていた四十年前ののどかな蒲生を思い出した。そして、再び、バル・ピーパル小学校を訪問。職員室に入って「ナマステ」と朝の挨拶をすると、思いもかけない光景が私の目に飛び込んだ。校長先生が、カーボン紙を使って保護者へ渡す資料を作っていた。

 「ありがとう。これからはガリ版のおかげで、カーボン紙が要らなくなる。本当にありがとう」。この一言で、私の心の奥のわだかまりが無くなり、晴れ晴れとした気分になった。この村での同文通信の方法はカーボン紙しかなく、この小学校でガリ版を使ってもらえる確信を持った。

 このあと、子どものノートにも直接印刷できることや手製謄写版はシルク布があれば簡単に作れることなどを説明した。さらに、ゴミだらけの教室をみんなで掃除し、住まいやまちにゴミを落とさない教育が大切であることを先生に伝えた。最後にみんなで記念撮影をし、小学校を後にした。

▲検尿を開始したものの、机が傾いているため検尿カップが倒れそうでちょっと不安
 ●医療支援も経験


 次なる目的地はリゾート地ポカラ。午前四時半に起床。ヒマラヤ連峰が姿を現し、やがて朝日がマチャプチャレ・アンナプルナ連峰を赤く染める、この一瞬をじっくりと脳裏に刻みつけた。そして医療支援に向け、交通渋滞に巻き込まれながら、ポカラから一時間のダンプス村に到着。五百人ほどの村人が歓迎式典を開いてくれた。

 首が重くなるほどの花の首飾りをもらって、早速、ブッタ基金やNGO関係者とともに京都中RCのメンバーもゴム手袋をはめ、慣れない手つきで検尿開始。近くの三つの部屋では医師が検診。特に目立つのは過労による女性の病気で、出産後の養生不足により子宮の障害が多いとのこと。

 発展途上国特有のさまざまな課題を抱えた国ネパール。ゴミ問題や公衆衛生、貧困、所得格差、ヒンズー教からの階級制度の名残、道路交通問題、男女間の労働差別、農村部女性の過労、学校教育問題など。日本は戦後めざましい発展を遂げ、生活は非常に豊かになった。しかし、心の豊かさが失われつつある。今後、両国の交流を通じて、日本の経済成長や社会資本整備という目に見える成功した部分だけでなく、過疎、高齢化、そして人間関係の希薄化から起こる犯罪など、日本の良くないところも学んでいただき、ネパールでのさまざまな課題を克服し、緩やかな発展を願うものである。

■プロフィール 岡田文伸 ■
前岡本夢プラン委員長で、生ごみ堆肥化運動にも取り組む。また、ガリ版芸術村準備室事務局として、謄写版文化の継承に力を注ぐ。現在、蒲生地区まちづくり協議会運営委員、東近江市リサイクル懇話会委員。(農業、1956年生まれ)

 

 


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ネット販売足掛かりに!

夢の実現へ大きな一歩

=日野町の栢木ゆうこさん=



▲こだわりのシフォンケーキで多くの人を幸せな気分にさせるゆうこさん
◆東近江・日野町◆

 小さい頃から料理やお菓子作りが好きだったというゆうこさん。十年前、友人宅で初めてシフォンケーキと出会い、パサパサした見た目とは裏腹に食べるとしっとりしているケーキのとりことなった。

 自分また周囲の人も幸せにできるお菓子作りをいつか仕事にしようと、理容師の仕事で学費をため、約一年間専門学校に通い、二十三歳で製菓衛生士(パティシエ)の資格を取得した。

 自分の店を持つ夢を抱き作りためたレシピは二百五十種類以上。その後、結婚・出産を経験、「自分で選んだ道だけど、二人の子どもと母親だけの世界で、どんなにがんばっても当たり前という感覚の毎日が、出口のないトンネルのように思えた」という。

 自分を取り戻し、社会と触れ合っていたいとの思いが募った頃、チャンスが巡ってきた。京都のカフェ店長を任された友人が、シフォンケーキの卸しを依頼。「失敗してもいい」と引き受けた。

 せっかくやるのならと、昨年一月にホームページ「Youchi chiffon cake(ゆーち シフォンケーキ)」を開設し、受注販売もスタート。

▲ホームページ「Youchi chiffon cake(ゆーち シフォンケーキ)
 少しでも安全・安心な物をわが子に食べさせたいと考える母親の視点を生かし、卵・バニラビーンズ・小麦粉・水・牛乳など食材選びに時間を掛け、完全無添加にこだわった。シフォンの命ともいえる口の中でほどけていくようなフワフワ感は、夏と冬の卵白に含まれる水分量の違いまで敏感に感じ取れるゆうこさんだからこそなせる技。

 看板商品である至極の“バニラ”は、誕生日プレゼントや贈答用として人気が高い。ゆうこさんは、地元産の野菜や特産品も積極的に取り入れ、季節感を感じる旬の食材を風味豊かに生かす。また、思いもつかないような意外な食材の組み合わせで驚かせることも。

 ホームページにアップされる写真からもこだわりが感じられる。評判は口コミでも広がり、多い時で月百個以上の注文があるという。

 現在、夫・健一さん(30)と友人らが協力して自宅敷地内にログハウスの新工房を建築中で、家族の全面支援を受け家事・育児そして自分の夢へとまい進するゆうこさん。「いつかは人を雇い自分の店を持ちたい」と、ネット販売を足掛かりに次なるステップを目指す。

 


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