家についての豆知識



 ベンガラについて    
    ベンガラは、酸化第二鉄です。耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性に優れ、天然素材なので人体にも安全である。
    簡単にいうと、鉄さびです。 
    ベンガラはもっとも安定した酸化状態 にあるため、化学変化を起こすことがない。酸やアルカリにも反応しない為に変色等がありません。
     その他に、紫外線にも強く木痩せや劣化を防ぎ、防虫効果もあります。
     
   
 
     
木について
材木の寿命について、その木が育った年限だけ耐力は上昇し、また同じ年限に向かって減少してゆくという法則
樋について
ステンレスいぶし樋・・・ステンレス板にいぶした銅が巻いているので錆びることは無い。見た目も上等。
銅板樋        ・・・銅板で作られた樋で、昔は最高級品。今は酸性雨が降るので、穴が開く部分もある。
塩ビ樋        ・・・鉄板をビニールで巻いたもの。継ぎ目や、切り口をつけた部分から錆び、腐食する。
塩ビ樋 ステンレスいぶし樋
瓦について
滋賀県瓦工事組合青年部の方との合同勉強会がありました。
最近の瓦の作り方
瓦の粘土を作る 瓦の形を作る
1) 粘土の材料(4種類)を機械で別々に砕く。
        頁岩  ・・  30%
        山土  ・・  30%
        杯度  ・・  30%
       瓦シャモット・  10%
2) 4種類の材料を機械でで混ぜて練り、7〜10日暗室で寝かす
3) さらに混ぜて練り、粘りをだす。次の4ラインへ分かれる。
1) 桟瓦(一番多く使われる瓦) 1ライン
    粘土は土練機(瓦の空気を抜き、練る機械)の中に
    いれられ桟瓦の形に押し出されてくると、自動的に
    決まった大きさにカットされる。そして、プレス機で桟
    瓦の形に型押しされて自動的に乾かすための乾燥台
    車に運ばれる。
2) 熨斗瓦、役瓦  計3ライン
瓦を焼く 瓦を乾かす
トンネル窯に入ってから約28時間で焼ける。
余熱帯から入り

焼成帯(1000℃)で焼かれる

いぶし室で980℃まで下げ、灯油と水で「いぶし」をかける

冷却帯で300℃まで下げる、外気が入らないようにする
1) 桟瓦ライン
    乾燥台車に乗せられた桟瓦は、自動乾燥室(温度・
    湿度・風力を自動で調節)で3日間乾かされる。乾か
    した後、自動的に移動(ハンガーにかける)し、ハケ土
    を塗る機械を通る(「いぶし」がよく付くようにするた
    め)ハケ土が塗られた水分の付いた桟瓦は、
    ハンガーで窯の上を通すことで水分を乾かせる。
    焼成台車へ。
焼く仕組み
「いぶし瓦」は、還元焔焼成で焼かれます 瓦が堅く焼きしまったら、温度が下がる
のを待って、炭素をいっぱい入れます。

酸素
二酸化炭素として
瓦(粘土)内の
酸素をとっていく



炭素
(スス)
瓦はまだ熱いので
スス(炭素)は
ぴったり瓦の表面に
張り付いてしまいます
窯内で酸素が足りないようにし、瓦(粘土)の
中にある酸素を出します。
酸化しているものから酸素をとるのを、還元と
いいます。
酸素が粘土から出ていって、灰色ぽい色に。
炭素を入れ、イブシをかける。
炭素を入れるというのは、実際には炭化
水素(灯油やプロパンガス)を入れます。
酸素があると「燃え」てしまいます。完全に
空気を遮断していなければなりません。
いぶし瓦の
できあがり。
むかし(だるま窯で焼いていた頃)のいぶし瓦は、およそ800℃くらいで焼いていました。現在は1000℃を
超える温度で焼いています。だから、むかしのものよりずいぶん堅くなっています。
・ 瓦は1400年もの歴史があります。
・ メンテナンス性では、金属・コンクリート製のものが10年に1度塗装が必要なのに対し、瓦は不要です。
・ 音を通しにくい材質で、吸水性・強度が増し、よりよくなった。
・ 雨が降ると、わずかながらマイナスイオンが発生します。
・ 廃瓦について、瓦を割って川に入れておくと水を浄化します。また、割って床下にまいておくと調湿効果もあります。
平板瓦 平板瓦隅の新しい工法 万十瓦 瓦の新しい工法の谷

い草について
熊本県の「すっぴんい草」を参考にしました。(一般のい草より上質です)
苗つくり 12月植え付け 7月刈り取り
織る い草に水分を与える 泥染め
い草は、寒い12月に植え付けを行い、暑い7月に収穫いたします。い草栽培は7ヶ月間の栽培期間を要する植物です。写真には
ありませんが、工程には先刈り・肥料散布・網張り・風除けネット張り・乾燥・袋詰めがあります。苗つくりもほぼ1年かけています。




畳は、畳表のイグサと畳床のワラから構成されている複合構造です。長期にわた
り使用されてきた日本の文化の象徴とも
いえる畳は、代々畳職人が培ってきた良いものをつくるという汗と努力の結晶であり、現在も畳は、床仕上げ材の貴重品として
住まいに使用されています。
畳の物理的性質を調べて見ると、保温性、調湿機能、力学的性質、遮音、吸音、 弾力性などに
優れていることがわかります。
イグサの構造は、写真に示された通りで、中心部は六角形のハニカム構造が見られスポンジ状で
白く弾力性に富み、丈夫であることがわかっています。このことからも昔、灯心に使用されていた理由が理解できます。
また、
寒い乾燥の時期には水分を放出し、湿度の高い時期には水分を吸収し、呼吸をしています。これは、人間の生理的条件に
合っていることになります。
 一方、畳の部屋の環境は、人間性を育てる為にも役だっています。 

「農林水産省 第2回イグサ・タタミ文化を考えるフォーラム21」 から抜粋
日本女子大学 理学部教授 南澤 明子先生

畳について
畳のランクを分けるものさしに、縦糸の種類・いぐさの量・いぐさの品種・いぐさの長さ・産地があります。
ランクには上・中・下とあり、上は綿糸2重の国産いぐさ、中は綿糸2重の中国産いぐさ、下は綿糸1重の中国産いぐさ等となります。
低いランクのものは、早く色が変わり部分的に黒くなります。
      
縦糸の種類
・綿糸1重
・綿糸2重
・麻糸
高い 綿糸1重 綿糸2重 麻糸は、わら床に適しているらしく、表替えの床が古いものには適していないらしい。
いぐさの量は、重いほど高価になります。
品種改良が進み、主に国産が高価。
いぐさの長さが長いほどいぐさの良い部分を選べる、短いと選べないので悪い部分が入る。
産地とは、土壌・気候等によりいぐさの質が変わる。
          日本では、熊本・八代が高級品
          中国では、四川が高級品とされている

断熱材について
断熱材は、吸湿すると断熱効果が低下します。そのため、冬に湿気が入り込む室内側に防湿シートが来るように施工しましす。
湿気を吸湿しやすいのが、グラスウールです。ロックウールは、吸湿しにくい材料です。熱貫流率が低く、熱抵抗値が大きいほうが熱を通しにくいことで、断熱効果が高いということです。
発砲スチロールの床断熱材は、熱抵抗値0.8
グラスウールの床断熱材は、熱抵抗値1.2
ロックウールの床断熱材は、熱抵抗値1.1
しかし、発泡スチロールは気密・施工性がよく、吸湿もありません。グラスウールは、ほぼ正反対です。

断熱材の種類
羊毛断熱材 施工性はグラスウール断熱材とほぼ同じ。調湿効果があり、燃えにくく、室内汚染物質を吸着します。優れた断熱効果。
セルロースファイバー 新聞古紙やパルプなど、天然の木質繊維を綿状に加工した断熱材。施工は専門職による。調湿効果もある。優れた断熱効果。
木質繊維版 木材チップを原料に、木質繊維をボード状に加工した断熱材です。調湿効果もある、リサイクル性の高い建材です。
グラスウール 珪砂や石灰石などのガラス原料を繊維状にしたもの。湿気を吸収しやすく、断熱効果が下がりやすい。施工性は良い。
ロックウール 高炉スラグ(鉱物質物質)などを繊維状にしたもの。優れた断熱効果があり、湿気を吸収しにくく、施工性は良い
・ F☆☆☆☆なので、人体に害を与える物質は確認されていません。
・ 防音効果もあり、高音域の音には特に効果的です。
換気口について
土台の下にネコ土台を敷き、土台と基礎の隙間を換気口とするようなやり方になっています。確かに、法律では5m以内に300cuの換気口を設けることになっていて、土台と基礎の隙間は合計すると法律は守っています。また、換気口を作ることにより基礎の立ち上がり部分の上端筋を切ることになるので基礎が弱くなるとも言われています。
しかし十分な換気をするなら、土台と基礎の隙間を設け、換気口も設けることです。基礎の上端筋はモーメントの小さな位置なら、切っても構造上問題はありません。柱と柱の間隔が小さい部分であれば、モーメントも小さいです。では、大きい部分とは2間の履きだし窓が入った中央部などです。
 少し難しい内容なので、分からなければ聞いてください。

ネコ土台には、栗の木がいいと思います。
税金について
自分の敷地に新築住宅(120u以下)を建てた場合

建設工事期間中
印紙税 建築工事
請負契約書
請負契約の金額により変わる
(金額により軽減措置あり)
金銭消費
貸借契約書
ローンの金額により変わる
登録免許税 建物の
所有権保存登記
固定資産税評価額×0.15%
        (住宅にかかる軽減税率、
               H22.3.31まで)
+登記手数料
抵当権設定登記 債権金額×0.1%
        (住宅にかかる軽減税率、
                H22331まで)
+登記手数料
不動産取得税 建物の
不動産取得税
(固定資産税評価額−控除額)×3%
(控除額は主に1200万円)
消費税 建設費×消費税率5%
固定資産税 土地 固定資産税評価額×1.4%×建設期間
都市計画税 土地 固定資産税評価額×0.3%×建設期間

初年度
固定資産税 土地 固定資産税評価額×1.4%/6
建物 固定資産税評価額×1.4%/2
(軽減措置・H22.3.31まで)
都市計画税 土地 固定資産税評価額×0.3%
建物 固定資産税評価額×0.3%

細かく規則があるので、正確なことはお尋ね下さい。
木造軸組工法住宅の構造計画の基礎
壁量の確保
地震力と風圧力に耐えられる住宅にする為のものです。
地震力と風圧力にあった壁量を求めるものです。
具体的に、
地震力とは
     その階の地震力=係数×その階の床面積
です。
風圧力とは
     その階の風圧力=その階床上1.35mより上の立面の面積×50

風圧力と地震力の大きい方をその階の水平力として計算します。

計算で出てきた水平力よりも、大きい壁量とします。
壁量とは
     筋かい又はベニヤ板等の壁倍率に長さを掛けたもの。
簡易な
計算方法で
確認
壁配置のバランス
偏って壁が入っていると、地震の時等に、建物がねじれてしまうので
ねじれないように、バランスよく壁を配置するものです。
計算方法とは

上下に4等分し、上の端と下の端の壁量をチェックします。偏ってなけ
れば、それでいいのですが、偏っていれば位置を変えます。
同じようにして、左右でもチェックします。
これを、4分割法といいます。
柱の柱頭・柱脚の接合方法
体力壁が取り付いている柱の上と下について、発生する応力に耐えら
れる接合方法を求めるものです。
   ・告示の仕様
   ・N値計算法
IHクッキングヒーターとガスコンロとのちがい・・・・・・・・・ガス会社から見ると
加熱の仕組みにより、中心部は早く沸騰するが、鍋の周辺部は中心部から伝わって沸騰すのので少し遅れる。
 中心部が沸騰しても、鍋の周辺部ではまだ沸騰していない場合がある。

ガスコンロは、ほぼ均等に沸騰する。
ガスコンロでは、湯気が常に上に上がり、90%が換気扇に吸い込まれるが、IHクッキングヒータでは、湯気が常に上に上がるわけではなく、60%が換気扇に吸い込まれる。
 天板にフライパン等を直接置くIHクッキングヒーターは、少々拭いたぐらいでは取れない油等が天板に残っているので、加熱することにより焼き付けてしまうのです。天板はきれいに拭いたつもりでも、拭けていないとのことです。また、炒め物は、天板の上をすらす為、表面に傷が付き、その傷の間に油等も入り、再び、フライパン等を熱すると、焼き付けてしまうらしい。
 電磁調理器具は、電磁波があり、人体に影響はないと言われていますが、「ペースメーカーを御使いの方は・・・・」という文章も取扱説明書にかかれています。30cm以上離すと、電磁波が弱くなるのですが、普通はそんなに離さないらしい。
住宅ローンについて →詳細は金融機関に御問い合わせ下さい。
財形住宅融資
唯一の公的融資。財形貯蓄を1年以上継続して、貯蓄残高が50万円以上ある人が受けられるもの。
5年ごとの変動金利。5年間は固定金利。融資限度額は、財形貯蓄残高の10倍、最高4000万円、物件価格の80%まで
フラット35
住宅金融支援機構と民間金融機関とのコラボレーションタイプ。民間金融機関が貸し出したローン債権を住宅金融支援
機構が買取り、それを証券化して機関投資家に売却するしくみ。保証量や繰上げ返済手数料が無料。全期間固定金利
型ローン、融資限度額が8000万円以下で物件価格の100%まで可能。
住宅の耐久性などについて公庫が定めた技術基準に適合する住宅。
フラット35S
フラット35を利用できる方で、フラット35の技術基準に加えて、省エネルギー対策等級4、耐震等級2以上、高齢者配慮
対策等級3以上、劣化対策等級3以上、維持管理対策等級2以上のうちの一つを満たした住宅。
当初10年間もしくは20年間にわたり、1.0〜0.3%の金利優遇が受けられる。
固定金利型
民間の固定金利型ローンもありますが、変動金利型と比べると金利が高め。金利は、金融機関によってちがう。
変動金利型
原則として、6ヶ月ごとの変動金利。毎回の返済額は5年ごとにしか変わらない(返済額が変わるまでは、返済額の
元本部分と利息部分の比率がかわるだけ)。金利の大幅上昇で、未払い利息分が累積することもあります。
固定金利選択型
このローンは、契約時に固定金利が適用される期間を選択します。その適用期間が終わると、変動金利にするか
固定金利にするかを選択できます。固定金利期間が長いほど、金利は高くなる。
住宅ローンの返済方法
 元金均等返済
毎月の返済額は、元金(借りた金額)分を返済回数で割った金額と、残る元金の利息を合計した金額。
毎回、利息分少なくなるのでが返済額が均一でない返済方法。元金の返済ペースが早い上、毎回の返済額が少なく
なる。
 元利金等返済方
毎月の返済額は、元金(借りた金額)分と、残る元金の利息を合計した金額。返済ごとに元金と利息の割合が変わる。
毎回の返済額が一定。最初のうちは、元金の減りが遅く利息が多い。



木造住宅の良さ

山の現状

古民家の耐震性

基礎工法について

伝統の燻し瓦

小舞土壁

ウッドマイルズ

床、壁、建具、電気








 

木造住宅の良さ

 環境に負担が少ない家つくりの実物教師として大変優れたものであると考えられます。地震,台風,豪雨,多湿など,厳しい気候条件であるにもかかわらず,高知では100年の寿命を楽にクリヤしている住宅がいくらでも見紛けられるのです。
 100年前の伝統工法の家の環境負荷について少し考えてみますと,この家は主に木と紙と土と石でできていて,先ず素材の製造,建設,維持,再生,廃棄のそれぞれの程で,最小の使用エネルギーで済みそうです。古い家の木製建具は隙間が多いので省エネではないと思われていましたが,機械換気をしなくてもこの程法的に義務付けられた程度の換気量をちょうど満たしそうです。次に耐久性の問題についてはこの家が物理的に楽に100年持つことは実証されていますし,田の字型のプランで機能的な融通性が高く,様々な生活の場面によく対応できて破綻のないプランでした。また長年掛けてデザインが落ち着いてきた民家型ですので,感覚的な寿命,つまり時代の感性にそれなりに対応できそうな確かさを備えていると言うことができます。更に屋根瓦以外には大量生産部品がどこにも使われていないので,補修の必要が出てきたとき,その部品の製造ラインが動いていないという問題,つまり供給的寿命ともいうべきものへの対応力も十分です。
 化学毒物の余り使われていない時代のものですので,生態系に害を及ぼす心配が少ない。資源の循環的供給の問題については木のように繰り返し自給できる素材や,土や石のようにその土地に無限にありそうなものを使うので問題がない。伝統工法では解体して移すことが楽にできる手法によっているし,最後に廃棄するとしても難なく環境に帰っていきます。この伝統工法は長い歴史と地域の風土の中で育ったもので,特異な厳しい気象条件によく耐えて,街中であろうと,農漁村の集落であろうと調和の取れた家並みを造ってきています。長く受け継がれてきた文化財的な建築の修復保存を含めて,この工法がこのような多様な視点から循環型社会の理想の教師であると認識しているところなのです。ただ木材資源の問題を中心に現代の生活と経済の実情に合わない部分があるので,その部分にどのようなデザイン上,工法上の回答を見出していくかが現代に生きる人に求められている社会的責任であろうかと考えています。

    

山の現状

大戦の前後に多くの山の木が伐り尽くされてしまいました。最後にはヘリコプターを使って奥山の貴重な蓄積まで集材され,希少資源を使い尽くしてしまいました。跡地にはスギ,ヒノキの植え付けが行われましたが,拡大造林と言ってそれまでは広葉樹の林であったところにも国策として植えられ,針葉樹の単純な造林地になってしまっています。
 この戦後の山から得られる木材は100年前に使い,それまでに我々の先人が築いてきた木の文化の伝統を支えてきた木材とは大分性質の違うものです。昔ながらの木は「天然木」で自然に生えた,野性的な環境で数百年掛けて生き残ってきたものであり,今われわれが使える木は人工的に造林され保護されて大事に育てられた「造林木」で,未だ数十年の時しか経っていないが,もう大きさだけは育ってしまって使えるようになった木材なのです。従って市場の価格も今ではスギ・ヒノキで見ると10対1の違いが生じています。つまり伝統的な工法の日本建築を支えてきた木材資源が,蓄積を使い果たしてなくなってしまったのです。造林木の10倍の価格がつくというのはこれが希少資源になって,希少価値が出てきたためです。これは資源保護の視点に立てば後世代のために使わないで温存すべきものです。文化財の修復など特別の場合を除いて,経済力にものを言わせて,高価で希少な天然木を使うことはいまや,余り倫理的な行動とは言えないと思います。
 なぜここまで資源を使い尽くすまで放置されたのでしょう。天然日の林を主に管理してきた林野庁が必ずしも適切な対応をしてくれなかったことに主に責任があろうかと思われますが,役所と言えども自らの組織を護るためということになると,望ましい行動は期待できないということの実例になろうかと思われます。つまり林野庁は大戦後,木材の価格が高騰した時期に独立会計で組織の経費をまかなう制度に移行していたのでしたが,次第に材木の売り上げでは経費をまかなえない時代になっても,自らの身を縮めて組織を改革することはできなくて,ズルズルと奥山の貴重な天然木の蓄積をヘリコプターを使って出すことで食い潰し,最後には3兆円余のつけを国民に残して,独立会計原則から離脱しそうになっています。数十年前からその成り行きは予見できたので一部の林業専門家の心を痛めてきていたのでした。結果的に日本列島に残されたのは,戦後植えられた,主にスギ・ヒノキの植林の姿です。しかしこれが山の野性的な生態についての配慮を欠いたものであり,農業のように効率を追求することにばかりに目が奪われていて,間伐をして人為的に密度をコントロールしなければ自然に放置したままでは健全な生育を維持できないような管理の方法を採ってしまったので,今大きな問題になっています。つまり植えられた当時の経済状況では,大根の抜き菜のように,過密になった部分を間伐して,その間伐材の売り上げで,その施業の費用がまかなえるという前提で,山の管理の計画が組み立てられていたからです。しかしその前提条件が崩れて,間伐はお金を輸血しなければできない作業になってしまい,間伐の遅れた病的な山が広い面積を占めることになってしまっています。過密な針葉樹の植林は、昼なお暗い林相になり,下草が育たず,足元の土がそのまま露出してしまい,100年経ってやっと1mmの厚さになるといわれる落葉が腐食して造られる,栄養分の豊富な腐葉土を,急な斜面に降る豪雨が洗い流してしまいます。その上に草が生えなくなって保水力を失った地面は洪水と渇水を調整する,いわゆる「緑のダム」としての機能を失ってしまい,下流に深刻な災害をもたらす危ない装置になってしまおうとしているのです。

    


古民家の耐震性

神戸の大震災で生き残っている姿を確認できました。調べてみると,布基礎も,筋違いも入っていない戦前の古い建物であったりします。ここで学ぶべきことは,筋違いを入れていても,布基礎を入れていても,倒壊してしまうのに,構造的な眼力を失わない一人の誠実な職人の仕事がこのような予想を超えた大きな地震のエネルギーにも持ちこたえている現実があることです。想定を超える力が働いたときには剛構造〔筋かいなどがある家)の対応では突然に崩壊して我々が造ったものが逆に凶器に変わるのです。布基礎とアンカーボルトは地震波を逃さず確実に建物に伝えてしまう装置になっているという見方もできるのです。それに比べて,伝統工法の自然石の基礎の上に乗せられた柱は一定以上の力で横滑りして,カをそいでしまうので安全装置にもなっています。礎石から外れた柱を復旧させる必要があるので,財産上の損失は生じやすいが,人命と財産では比較の議論にはなりません。
もう一つ,筋違いを入れて建物を剛構造として固めようとする思想は接合部に力が集中することになるので,木構造には余り賢明な工法とは言い難いと考えています。木材は自然の素材を切り削って仕口を作るので,その部分の断面が一番小さくなり,弱点が集中します。これは実際問題として金物で補強して補えるような次元を越えた,工法に伴う本質的な問題なのです。ここでも伝統工法は貫を通したり,肘木を通して,この弱点の避けられない部分を無数に増やすことによって力を分散させる工法を採っています。これは不静定次数を限りなく上げてゆく構造体になるので計算式に乗りにくく山勘に頼らざるを得ないいやな仕事だということは私にも判っています。古くなって土台の部分は腐ってなくなりかけているような骨組みを見たとき,土台が腐って,地震力を建物に伝えにくくしたことで,建物はより安全になったのではなかったかと思ったのでした。

    


基礎工法について

 古い住居の伝統には、竪穴式住居と高床式住居とがあります。一方は地面の中に入り込んで冬季にその暖かさを利用しようとする姿勢であり,一方は地面からできるだけ離れて夏季にその冷たさが呼び込んでくる湿気を避けようとしています。地面の深いところでは、土地によって違うが、一年中温度は安定しているので,これを利用すると,化石エネルギーを使わなくても夏涼しく,冬暖かい家になりやすい筈です。100年前の木造民家もやはり,家の中に高床の部分と,竪穴ではないが平土間の部分が混在しています。真冬の暖房時に地熱を利用するために床下換気口を閉じることはなんら危険はないと思われる。しかし、床下に夏季の湿った空気を閉じ込めると,柱や土台を腐らせ,シロアリを招き寄せるようなことになります。
 鉄筋コンクリートの耐久性は一般には数十年程度で,戦後の住宅工法の寿命にちょうど見合っているとは言え,循環型社会の住宅の在るべき工法と言えるものではないようです。基礎コンクリートが解体再利用される手法を考えると,今の仕様ではどうも始末の悪いゴミなのです。鉄筋とコンクリートを分離することも大変だし,コンクリートを骨材などに再利用することも効率のよいものではないでしょう。
 100年前の自然石や,三和土による基礎構造は断然洗練されたものに見えてきます。自然石は掘り起こしてそのまま再利用できるし,三和土は違和感なく土に返るのです。

    

伝統の燻し瓦

 雨の多い土地柄を反映して,大きな勾配屋根と,その美しい表現に心を砕いて来ました。屋根の防水メカは屋根材の選択によって自ずと決まるものですが,またこの選択によって屋根勾配も決まるし,その存在感も決まってきます。近代建築ではこの屋根勾配を無くして陸屋根にするのが当然のような風潮に支配されてきていましたが,陸屋根は本来砂漠か,それに近い雨の少ない土地柄の屋根形式でした。雨が降っても漏る前に雨が止むような土地柄にふさわしい屋根でしょう。燻し桟瓦、切妻,5寸勾配(下屋では4寸勾配)もまた美しい町並みに見えます。5寸勾配は,風雨が厳しくても大丈夫です。地域全体が被災した時など,とても専門家の手が及ばない時期に,取り急ぎ素人が一部瓦を差し替えて対応できる,このような伝統的なシステムは,屋根材の選択にとってかなり重要な視点です。また、透湿防水シートの下地の上に空茸きにすると、屋根が軽量で地震に強いです。

    

小舞土壁

小舞土壁が数カ月から一年も掛けて塗られるのに比べて,新建材による軽い壁は安価でインスタントに対応できて,工期の短縮を実現します。やはり軽くて薄いものは存在感が希薄で,我々の生活を受け止める力に欠けるこセモノであると言わざるを得ません。水を含まないので吸放湿性能が貧弱で,梅雨のジメジメと冬季のカラカラの湿度を調整することができず,住人の肌にそれをさせてしまうことになります。また重量に欠けるので外の騒音を通してしまい音の響きをしっかり返す力がないので部屋の残響を貧しいものにしてしまいます。また製造過程の都合で,ホルムアルデヒドなど健康に有害なVOCを放出して,強制的に室内空気の入れ替えを義務付ける法律まで必要になったのです。更に一般に寿命が短く,時を経て味が出て古いものが愛されるという存在にはなりえないので,10年から30年足らずで,膨大なごみを造ることになってしまったのでした。それに比べて小舞土壁は使命が終わっても素直に土に帰つていく哲学的とも言える単純さがあります。

    

ウッドマイルズ

ウッドマイルズ=木材のリッポウメートル*輸送距離
ウッドマイルズ小さいほど、環境負荷の少ない家づくりにつながる。
小さいほど、二酸化炭素の排出量が少ない。国内でも、九州など遠くから車で運んでくるなら、海外から船で運んでくるのと余り変わらない。
つまり、地産地消が一番無駄なエネルギーを使わなくてもいいということです。
ウッドマイルズ研究会ホームページ http://woodmiles.net

    


ほんものの床、壁、建具、電気


 合板のフロアは無垢の床板と比べると寿命が短く,接着層があって息もしないので,夏に素足でいると,ジトッと汗ばんできます。その上に時を経て,傷ついても味わいを深めるような存在感のある代物ではありません。床は傷ついて,直ぐに下の合板の層が出てくるようなものでは問題になりません。
 は無農薬の表で,無農薬のワラ床のものを麻の糸で縫ったものがいいでしょう。
 土間や床下はニガリ入りの三和土を理想としていますが,モルタル塗りに留まっている例がほとんどです。ニガリ入りの三和土の調湿効果は確かに好ましいものです。
壁 
 外壁ですが、板張りは,よろい本蔀張り,または堅羽目目板張りがいいでしょう。喰塗りは家並みの品格を支えている重要な素材であると考えています。手仕事なので少々高価にはなりますが。伝統の大壁工法は土塗りを何層にも塗り重ねるものですが,現在我々の使っている仕様はラスモルタルの上に漆喰を塗る簡易工法に留まっています。
建具
 循環型の住居の理想から考えれば木製建具になります。単位体積当たりの製造時のエネルギー使用量がアルミは1000倍くらいなのです。また木製建具は小規模な職人の工場で地域の需要をまかなうことで,地域産業としても好ましいものです。木製建具はスキ間風が入ると言われますが,アルミ建具もパッキンの部分の劣化により10年ほどで密閉度が失われたものもあるそうです。
 最近,居室の換気が法的に厳しく規制されるようになりました。住宅の必要換気を機械に頼る手法より、木製建具程度のスキ間で換気をするべきだと思います。もうひとつ,木製建具はペアガラスを入れた場合にヒートブリッジにならないので,結露とそれに伴うカビの発生の問題は、ないのです。
照明器具
 蛍光灯は、電気料金が安いし,電球が長持ちしますが、白熱灯は太陽光に近く,人類が数十万年親しくしてきた焚き火の色に近い夜の色の光です。それに比べると蛍光灯の光は全く人工的な光で,特定の波長の色しか出していないいびつな光です。人間の生体のリズムは昼と夜で周期を刻んでおり,昼間は交感神経が優勢であり,日が暮れて夜が来ればこれと反対に副交感神経が興奮してきて穏やかな休息の態勢に入るようになっています。夜,明かりを利用するようになってからもこのリズムは崩れないできています。ところが蛍光灯の光は昼間の光線の色温度に近いので,このリズムが崩れてしまうような刺激を与えることになってしまうのです。その話をすると,それなら電球色の蛍光灯にすると,短絡的に対応する人がいますが,これも相当不自然なニセモノの光でしょう。