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平成17年11月21日に兵庫県三木市にある、E-Defense
(実大三次元振動破壊実験施設)で在来木造住宅の公開実験がありました。
見る機会が得られたので、見に行きました。
試験体の概要(資料による) 本実験に用いる住宅は、本年2月に公募し約200件の応募された中から、昭和49年5月に兵庫県明石市に建てられた木造住宅2棟を選考しました。この2棟の住宅は、同じ構造仕様、間取りで建てられており、E−ディフェンスに移築後、1棟のみ耐震補強を施しています。 |
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移築工事の方法 ・道路上を運搬する為、幅3.3m、高さ3.8m以内のサイズに分割して移築する。 ・主振動方向の壁は損傷させない。 ・接合部を解体するとその性能を再現するのは難しい為、接合部ではないところで分割し、元の材料強度を目標として継手を設計し、補修する。 ・湿式工法部分を解体するとその性能を再現するのは難しい為、湿式工法部分の分割は必要最小限に留め、やむを得ず分割した湿式工法壁は可能な範囲で元のせん断性能に近くなるよう補修する。 ・せん断耐力が比較的低い開口部を通るように切断面を設け、切断部分を可能な範囲で元のせん断性能に近くなるよう補修する。 |
耐震診断 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
右棟の耐震精密診断結果
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左棟の耐震精密診断結果(補強前)
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![]() 左棟の耐震精密診断結果(補強後)
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表の見方 耐震精密診断・・・建築物が持つ固有の構造状態を部位別に評価し、耐震性能を判定することです。 耐力壁の種類、位置が正確にわかっている状態で評価できるものに限ります。 必要耐力・・・「この建物はこれだけの耐力がないと、地震等でつぶれます」という、力の大きさです。 保有する耐力・・・この建物の耐力壁が抵抗できるの力の合計。 剛性率・・・階別にバランスよく耐力があるかの数値。1.00がバランスがよく、バランスが悪くなれば小さくなる。 例、2階建ての住宅で、2階が1階よりも極端に耐力が小さいときは、地震のとき地震力が2階に集中してしまう。 偏心低減・・・階毎にバランスよく耐力壁があるかの数値。1.00がバランスがよく、バランスが悪くなれば小さくなる。 例、1階で重心位置と剛心位置(耐力壁の重心)が近ければ、地震のとき建物がねじれない。遠ければ、 地震のとき建物がねじれていまい、建物の隅では大きな力がかかってしまう。 床仕様・・・地震のとき床を伝って各耐力壁まで力を分散させる。1.00が硬い床で、柔らかい床で地震力を分散できなければ小さくなる。 床が柔らかくて力を各耐力壁に分散できなけらば、耐力壁にバランスよく地震力を分散できない。 保有する耐力Qd・・・保有する耐力に剛性・偏心・床仕様の低減率を掛け合わせたもの。 充足率・・・必要耐力を保有する耐力Qdで割ったもの。 0.7未満 ・・・倒壊または大破壊の危険があります。立て替えまたは補強が必要。 0.7〜1.0・・・やや危険です。補強を行ってください。 1.0〜1.5・・・一応安全です。より安全とするため、補強が望ましい。 1.5以上 ・・・安全です。 |
補強方法
・基準法で定める極めて稀に起こる地震を上回る、兵庫県南部地震の激震に対しても倒壊に至らぬよう上部構造評点1.5を目指す。 ・精密診断のうち保有耐力診断法の評点によって補強計画の最終判断をする。そのほかの診断結果は、参考値とする。 ・極力現状のプランを変えず、機能性が損なわれないようにする。 ・特殊な金物を使用せず、一般的な材料(筋かい、構造用合板)を用いて誰でもできる補強方法とする。 ・接合部低減や耐力要素による配置の低減係数がかからないよう、接合部を補強し、耐力要素をバランスよく配置する。 ・接合部の先行破壊を避けるため、さらに極端に剛強な金物の施工の必要がないよう壁基準耐力の上限(14kN/m)を上回る壁では 補強しない。 ・外周壁のモルタルをはがすような壁補強は避け、極力、内壁で補強する。 |
1階・・・筋かい(45×90)8箇所、増設する構造用合板13箇所、梁1本、ホールダウン金物8箇所、金物12箇所 2階・・・筋かい(45×90)5箇所、増設する構造用合板2箇所、ホールダウン金物2箇所、金物7箇所 |
入力波
1995年兵庫県南部地震においてJR鷹取駅で観測された実波形をフルスケールで入力する。各成分の最大値を下表に
示す。入力方向はNS方向が建物の桁行(Y)方向となるようにした。
加速度(gal) | 速度(kine) | 変位(cm) | |
NS | 641.7 | 149.2 | 86.33 |
EW | 666.2 | 117.0 | 37.78 |
UD | 289.5 | 16.50 | 11.15 |
実験は数秒で終了しました。
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![]() 補強を施した左の住宅は崩壊は しませんでした。 しかし、外壁が落ちています。 |
この実験の数日後、もう一度実験がありました。
残った建物だけの実験でした。
この実験では、今回の実験の0.6倍の入力波でした。この揺れでも、崩壊はしませんでした。
次に1.0倍、つまり今回と同じ入力波では、崩壊しました。
実験から ・補強をすれば、極稀に起こる地震でも崩壊はしない。人名は助かることです。 |
E-Defense (E-ディフェンス)とは 施設の愛称「E-Defense」のEはEarthを表わし、地球規模で災害を未然に防ぎ、住民の生命と財産を守る研究開発への期待を示しています。シンボルマークは、大地の割れと地震の姿、およびこれに対応する三次元振動破壊実験施設の三次元の動きを三色で表現しています。 ![]() |